Asinus's blog

西牟田祐樹のブログです。

Boethius "De topicis Differentiis"のエンテュメーマ

はじめに

 テキストはPatrogia Latina 64を使用した。以下のサイトで読むことができる。 https://archive.org/details/patrologiaecurs12unkngoog/page/n645/mode/2up

翻訳

[1184B5] これら(三段論法と帰納)が論証の二つの原理であり類であるのと同様に、二つの別の論証の様式が認められる。一つは三段論法に従属し、もう一つは帰納に従属する。それらについて一方は三段論法に由来するが三段論法ではなく、もう一方は帰納に由来するが帰納[の説明規定]を満たさないと明らかに考えられる。それらは省略三段論法(enthymema)と例示である。

 省略三段論法とは不完全な三段論法であり、それにおいて全てではない前もって措定された命題によって性急に結論が導かれるような言表のことである。例えば次のように言う時がそうである。「人間は動物である、それゆえ人間は実体である。」これは措定された別の命題「全ての動物は実体である」が省略されているからである。省略三段論法は普遍から証明すべき結論を性急に主張するので、いわば三段論法に類似したものなのである。三段論法を構成する命題の全ては使用されていないので、三段論法の説明規定からは区別され、不完全な三段論法と呼ばれる。