Asinus's blog

西牟田祐樹のブログです。

イシドルス『語源』翻訳 II-22 弁証論について

はじめに

テキストはP.K.Marshell, Etymologies. Book II, Rhetoric with translation and commentaties, Paris, 1983. を使用した。また同書中の英訳とBerney, Lewis, Beach and Berghof, The etymologies of isidore of seville, Camblidge University Press, 2006の英訳も参照した。 また本箇所でイシドルスが用いたソースはカッシオドルスの『綱要』(institutiones), 2.3.1である。 以下のサイトでテキストを確認することができる。
https://www.documentacatholicaomnia.eu/03d/0484-0585,_Cassiodorus,_Institutiones_Divinarum_Saecularium_Letterarum,_LT.pdf

https://faculty.georgetown.edu/jod/inst-trans.html

翻訳

弁証論について

弁証論とは物事の原因を議論するため(disserendum)に考案された学(disciplina)である。弁証論は哲学の種であり、論理学(logica)と言われる。つまり定義し、問い、議論する能力のことである。弁証論は複数の種の問いにおいてどのように議論することによって真と偽が判別されるのかを教えるのである。一部の最初期の哲学者たちの語ったことの中にはこれら[弁証論]の事柄も含まれてはいた。だがそれを知識まで至らせはしなかった。その後にアリストテレスがこの知識の諸推論(argumenta)をいくつかの規則へと至らせ、dialectica(問答法, 弁証論)と名付けた。それはdialecticaではdictum(述べられたこと)について議論されるからである。なぜならlecton(lekton, 述べられたこと)はdictio(発話)と呼ばれるからである1。従って修辞学の後には弁証論の説明が続く。それは多くの点で両者には共通点があるからである。


  1. dialectica(dialecticē)という名前に関する説明のためlektonが説明されている(dia+lectikē)。ストア派の用語であるlektonはここでは関係がない。