Asinus's blog

西牟田祐樹のブログです。

イシドルス『語源』翻訳 III-3 『数とは何であるか』

はじめに

テキストはOroz Reta J. and Marcos Casquero, M.-A (eds), Etymologias: Edition Bilingüe, Madrid, 1983. を使用した。Berney, Lewis, Beach and Berghof, The etymologies of isidore of seville, Camblidge University Press, 2006の英訳も参照した。

翻訳

数とは何であるか

数(numerus)とは単位(unitas)からなる大きさのことである。1 (unus)は数ではなく数の原理(semen)である1。numerusという名前はnummus(貨幣)から与えられたものであり、数が伝播することからその名前を与えられた。1 (unus)はその名前をギリシア語から得た。なぜならギリシア人は1 (unus)をεἷςと呼んでいるからである。そしてduo (2)とtres (3)をギリシア人はδύοとτρίαと呼んでいる。Quattuor (4)は図形のquadratus (4角形)からその名前を得ている。Quinque (5)は本性(natura)によってでなく、数を命名した者の自由な取り決め(placitus voluntatis)によってその名前を得ている。そしてsex (6)とseptem (7)はギリシア語に由来している。ギリシア語で帯気音を持つ多くの名前で我々は帯気音の前に文字Sを置いている。それゆえἕξ (hex)の代わりはsexであり、ἑπτα (hepta)の代わりはseptemである。これはちょうどハーブherpillumの代わりにserpillumと言うのと同様である。Octo (8)も翻訳によって名付けられたもので、ギリシア人と我々とで同様である。同様にギリシア人のἐννέαは我々のnovem (9)であり、 ギリシア人のδέκαは我々のdecem (10)である。decem (10)はギリシア語が語源と言われている。それというのも10はその下にある数を縛り結びつけるものであり、そしてδεσμός(縛り付けるもの、鎖、綱)はそれによって縛り結びつけるものであると言われているからである。さらにvinginti (20)は10が2回生じたもの(decem bis geniti)で、[bisの]文字Bの代わりにU (V)が置かれたものであるのでそのように言われる。Triginta (30)はternario (3つ組)が10回で作り出されたものであるのでそのように言われる。Centum (100)はcanthus(車輪)つまりcirculus(円)に由来してそのように言われる。このようにnonaginta (90)まで同様に続く。Centumはcanthus(車輪)に由来してそのように言われる。このようにmille (1000)まで同様に続く。Milleはmultitudo (多数)に由来してそのように言われる。またmilleはあたかもmultitiaのような意味でmilitia(軍隊)にも由来している。そしてmilia (1000)も同様の由来である。この語はギリシア人たちには文字を変えてmyriada (myriad)と呼ばれている2


  1. cf. アリストテレス形而上学』5巻6章1016b, 10巻1章1052b.
  2. ギリシア語にはμυρία (10000)がある。