Asinus's blog

西牟田祐樹のブログです。

読書メモ: マイモニデス『論理学』(2)

前回はこちら

https://incognito0.hatenablog.com/entry/2021/03/07/154621

7章

  • 20個の用語: 三段論法の第一格, 第二格, 第三格, 三段論法の式, 定言三段論法, 仮言三段論法, 結合的仮言三段論法, 分離的仮言三段論法, 直接の定言三段論法, apagogic syllogism, 帰納的推論, 類比的三段推論*1

  • 途中に挿入部分が入るが、挿入部分はこの章の後にまとめることにする。

  • 第二格の例が'Every man is an animal' and 'Every bird is an animal'になっている。「第二格では両方の前提が肯定であるときはいかなる結論も生じない」 *2ということに反した例である。Efrosの注によれば他の著者の著作にもこのような例が見られる。よってEfrosはこれらの例は格の説明であり、第二格において妥当な三段論法の例ではないと想定し、テキストを修正していない。

  • 「これら三つの仕方で中名辞によって結合されたすべての命題の組が三段論法を構成するのではなく、以下の分割が定めるようなもののみ構成することを知るべきである」とあるので三段論法は形式的には前提命題の組として考えられている。

  • 「三つの格のそれぞれで36個の組み合わせが生じ、三つの格での総数は108となる。正しく結論を導く三段論法となる組み合わせは14個である」と説明される*3

  • 第一格には4個, 第二格には4個、第三格には6個の式があるとされる。この個数はアリストテレス『分析論前書』と一致している。

  • 定言三段論法のより詳細な説明については本著作の目的にはそぐわないとして説明されない。ここで別の人がそれぞれの定言三段論法の格に関するコメントを挿入している。

  • 結合的仮言三段論法の例: 'If the sun rises, it will now be day'.

  • 分離的仮言三段論法の例: 'This number is either odd or even', 'This water is either hot or cold or lukewarm'.

  • 仮言三段論法の式の個数は合計5つで、結合的なものが2つで分離的なものが3つである。

  • apagogic syllogismとは以下のようなものである。証明したい命題の矛盾命題を仮定し、三段論法を形成することで仮定した矛盾命題が偽であることを証明するような推論である。

  • 帰納的推論とは以下のようなものである。その特殊例を調べ、特殊例の中で帰納的に真であることが示されたものがあるような確かな命題がある時、この命題を全称命題とみなし、三段論法の前提として措定するような推論である。

*類比的推論とは以下のようなものである。互いがある点で類似した二つの事物において、一方を除外する何らかの法則を見つけ、その法則を他方の事物にも適用するような推論である*4

  • 帰納的推論の例: Matter consists of the treasury, the chair, the basin, and their like, and they are all created; the heavens belong to the class of material things; consequently they too are created.

  • 法的推論が存在することが述べられるが詳細は説明されない。

挿入されたコメント

  • この挿入コメントはJacob Antoliによると13世紀のアラビアの自然科学文献の著名なヘブライ語翻訳者によるものである (Efros)。

  • 第二格と第一格の類似点と相違点、第三格と第一格の類似点と相違点、第二格と第三格の相違点という順で説明されている。そしてそれぞれの格で妥当な三段論法がすべて列挙されてる。

*1:syllogismだが「推論」と訳し分ける。

*2: cf. ヒスパーヌス『論理学綱要』4.7, "In secunda figura, ex puris affirmativis nichil sequitur."

*3:それぞれが36個となる計算方法が理解できていない。(43)*3=192となるはずである。

*4:「二つのうち一方で、ある法則を見つけ」とするテキストの読みもある。