Asinus's blog

西牟田祐樹のブログです。

イシドルス『語源』翻訳 III-10 『幾何学の発見者と幾何学という名称について』

はじめに

テキストはOroz Reta J. and Marcos Casquero, M.-A (eds), Etymologias: Edition Bilingüe, Madrid, 1983. を使用した。Berney, Lewis, Beach and Berghof, The etymologies of isidore of seville, Camblidge University Press, 2006の英訳と以下の文献中の英訳を参照した。

Brehaut Ernest, An encyclopedist of the Dark Ages: Isidore of Serville, Columbia University, 1912.

この文献は以下のサイトで読むことができる。

https://archive.org/details/encyclopedistofd00brehrich/page/n9/mode/2up

翻訳

幾何学の発見者と幾何学という名称について

幾何学 (geometriae disciplina)は初めにエジプト人によって発見されたと言われている。それはナイルが氾濫し、すべての所有地が泥に覆われた時、線と測量具によって土地を分割したのが始まりとなってその名がつけられた。そしてそれから、知者(sapiens)の鋭さによってより遠くまで[測量が]及ぶことで、海や天や空の大きさ(spatium)が測定された。駆り立てられた知的欲求によって知者たちは土地の測量の後には、天の大きさを探求し始めた。それは月と大地との間にはどれほどの間隔[距離]があるか、太陽自体は月からどれほど離れているのか、天の頂上までの長さ自身はどれほど伸びているのか、ということである。そして知者は真実らしい[妥当に思われる]推論によって天自体の距離と地球の円周(orbis ambitum)をスタディオン数を用いて確定した。しかし土地(terra, 大地)の測量からこの学問[geometria]は始まったので、その起源から名前が取られている。それというのも、geometria(幾何学)はterra(土地、大地)とmensura(測ること、測定)からその名前を得ているからである。terraはギリシア語ではγῆと呼ばれ、mensuraはギリシア語ではμέτραと呼ばれるからである。 この学芸(disciplinae ars)はその内に線、間隔[距離]、大きさ、形[図形]を含んでおり、形の中には面積[mensura, 測定]と数を含んでいる。