Asinus's blog

西牟田祐樹のブログです。

イシドルス『語源』翻訳 XII-1: 35-37『家畜と役畜について』(ラクダ)

はじめに

テキストはOroz Reta J. and Marcos Casquero, M.-A (eds), Etymologias: Edition Bilingüe, Madrid, 1983. を使用した。Berney, Lewis, Beach and Berghof, The etymologies of isidore of seville, Camblidge University Press, 2006の英訳を参照した。

翻訳

次の二つのいずれかの理由によってCamelus(ラクダ)はそのように呼ばれている。一つは荷を負わされた時、より短く低く(brevis et humilis)なるように身をかがめるという理由である。なぜならギリシア人は短く低い(brevis et humilis)ことをχαμαί(chamai, 地面に)と呼ぶからである。もう一つは背中が曲がっている(curvus)という理由である。なぜならギリシア語ではκαμουρ(kamour)1はcurvus(曲がっている)を意味するからである。他の地域もラクダを産出するけれども、最も多く産出するのはアラビアである。ラクダは地域で次のように異なる。アラビアのラクダにはコブが二つあるが、他の地域のラクダはコブが一つである。

Dromeda2 (ヒトコブラクダ)という種類のラクダは背丈はより低いが、動きはより速い(velox)。それゆえにdromedaという名前で呼ばれている。なぜならcursus(走ること、競走)とvelocitas(速度、敏捷)はギリシア語でδρόμος(dromos, 走ること、競走)と呼ばれているからである。なぜなら1日で100マイルかそれ以上を進むのが普通だからである。

ウシやヒツジやラクダのような動物は反芻をする(rumimat)。反芻(Ruminatio)はruma (rumen)に由来してそのように呼ばれる。rumaとは喉の突出した部分であり、それによってある種の動物は飲み込んだ食物を吐き戻すのである。


  1. καμουρという語は他の文献での用例が確認できなかった。どうやらイシドルスが参照していたテキストの乱れが原因でこのような語が生じたらしい。
    https://hal.univ-lorraine.fr/hal-01509019/document
    そもそもギリシア語でラクダはκάμηλος(kamēlos)である。

  2. Dromedary - Wikipedia