Asinus's blog

西牟田祐樹のブログです。

イシドルス『語源』翻訳 X-1: 1-5『人間と怪異について』

はじめに

テキストはOroz Reta J. and Marcos Casquero, M.-A (eds), Etymologias: Edition Bilingüe, Madrid, 1983. を使用した。Berney, Lewis, Beach and Berghof, The etymologies of isidore of seville, Camblidge University Press, 2006の英訳を参照した。

翻訳

Natura(自然)は何かが生み出されること(nasci)を作り上げる(faciat)ことからそのように呼ばれる。なぜなら自然は生み出すこと(gignere)と作り出すこと(facere)ができるからである。自然とは神のことであると言うものもいる。それは神から万物が創造され、万物が存在しているからである。Genus(種, γένος)は生まれること(gignendum, γίγνεσθαι)からそのように呼ばれる。Genusは大地(terra)から派生した名詞である。大地から万物が生じ(gignuntur)、terraはギリシア語ではγῆ (gē)と呼ばれるからである。Vita(生命)はvigor(精力)、あるいは生まれることと成長することの力を生命が含んでいることからそのように呼ばれる。それゆえ木でさえも生命を持っていると言われる。なぜなら木も生まれ成長するからである。

Homo(人間)は『創世記』1に「神は大地の塵でもって人間を作った」(Et creavit Deus hominem de humo terrae)とあるようにhumus(塵)から作られたことからそのように呼ばれる。誤用によって人間全体が二つの実体、つまり魂と肉体の結合(societas)によって呼ばれているが、厳密には人間(homo)は塵(humo)に由来してそのように呼ばれる。

ギリシア人は人間をἄνθρωποςと呼んでいた。なぜなら創造主を熟視する(contemplatio)ために、人間は塵から持ち上げられ、上を仰ぎ見るからである2。 詩人オヴィディウスが次のように言い表しているようにである。

「他の生き物は前屈みで、目が地面を向くのに、 神は人間に高みを仰ぐ顔を授け、天を見よ、 真っ直ぐ星々へ眼差しを上げよ、と命じた」3

(Pronaque cum spectant animalia cetera terram, os homini sublime dedit caelumque videre iussit, et erectos ad sidera tollere vultus. )

つまり直立した人間は地に向かうためではなく、神を求めるために天へと向いているのである4。地に向かうのは例えば家畜で、自然は前傾で腹に服従するように家畜を形作った。


  1. 『創世記』2:7. cf. Vulgata “limus”.
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  2. なぜこの説明がἄνθρωποςの語源説明になっているのかは一見すると明らかではない。Barney et al. はωπος(ōpos)とὤψ (ōps: eye, face, countenance)との関係を予想している。

  3. 変身物語 I, 1:84、西洋古典叢書、高橋宏幸訳、2019

  4. cf. プラトンティマイオス』90.