Asinus's blog

西牟田祐樹のブログです。

イシドルス『語源』翻訳 I. 1,2『学芸と技術について』『自由七科について』

はじめに

テキストはOroz Reta J. and Marcos Casquero, M.-A (eds), Etymologias: Edition Bilingüe, Madrid, 1983. を使用した。Berney, Lewis, Beach and Berghof, The etymologies of isidore of seville, Camblidge University Press, 2006の英訳を参照した。Oroz Reta J. and Marcos Casqueroの西訳とIsidoro di Siviglia, Etimologie o origini, primo volume, a cura di Angelo Calastro Canale, UTET, 2004.の伊訳も参照した。

内容が理解しやすいよう適宜改行を行なった。

翻訳

1. 『学知と技術について』

Disciplina(学知, 学芸)はdiscere(学ぶこと)からその名を得ている1。それゆえscientia(知識)と呼ばれることもある。それはscire(知ること)がdiscere(学ぶこと)に由来してそのように呼ばれるからだ。なぜなら我々の誰もが学ぶことなしには、知ることはないからである。あるいはdisciplinaは完全に学ばれる(discitur plena)ことから、そのように呼ばれる2。技術(ars)は厳密な(artus)指示と規則からなることからそのように呼ばれる。ある人々はこの語はギリシア語のἀπό τῆς ἀρετῆς(徳によって)に由来していると言っている。ἀπό τῆς ἀρετῆςとはつまりa virtusであり、scientiaとも呼ばれていた3プラトンアリストテレスは技術と学知の間には次のような相違があるとした。技術は他のように起こり得るものに関わるものである。他方、学知は他のようには起こり得ないものに関わるものである4。それゆえ、正しい議論によってある物事が論じられる時、[その物事に関する知識は]学知となる。 もっともらしく思いなしに基づく物事が扱われる時、技術という名前で呼ばれることになる。

2. 『自由七科について』

自由学芸には七つの学科がある。

第一は文法学である。この学科は話すための技術(peritia)である。

第二は修辞学である。この学科は、雄弁の輝かしさと豊穣さゆえに、国家に関する議論でとりわけ必要であると考えられている5

第三は弁証論であり、論理学という別名がある。この学科は非常に精密な議論によって、偽であるものから真であるものを区別する6

第四は算術である。この学科は数の原理と分割についての内容を含んでいる7

第五は音楽である。この学科はcarmenとcantusからなる8

第六は幾何学である。この学科には大地の測定と測量が含まれている9

第七は天文学である。この学科には星の法則についての内容が含まれている。


  1. cf. アウグスティヌス『ソリロキア』2:11.

  2. カッシオドルス『綱要』2:3. “disciplina enim dicta est, quia discitur plena”

  3. カッシオドルス『綱要』2:3.
    “Ars vero dicta est, quod nos suis regulis artet atque con stringat: alii dicunt a Graecis hoc tractum esse vocabulum, apo tes aretes, id est, a virtute, quam diserti viri unuscuiusque rei scientiam vocant.”

  4. アリストテレス『二コマコス倫理学』第6巻3章、4章 (1139b-1140a).

  5. イシドルス『語源』翻訳 II-1 修辞学とその名称について - Asinus's blog

  6. イシドルス『語源』翻訳 II-22 弁証論について - Asinus's blog

  7. イシドルス『語源』翻訳 III 序文: 『数学について』 - Asinus's blog
    イシドルス『語源』翻訳 III-1, 2 『arithmeticaという名称について』『算術の創始者について』 - Asinus's blog

  8. Berney et al.: poems and songs, Reta&Marcos: esquemas metricos y cantos, Canale: carmi e canti. 語源III-15ではsonusとcantusからなるとしている。

  9. イシドルス『語源』翻訳 III-10 『幾何学の発見者と幾何学という名称について』 - Asinus's blog