Asinus's blog

西牟田祐樹のブログです。

イシドルス『語源』翻訳 XII-2: 20-21『獣について』(オオヤマネコ)

はじめに

テキストはOroz Reta J. and Marcos Casquero, M.-A (eds), Etymologias: Edition Bilingüe, Madrid, 1983. を使用した。Berney, Lewis, Beach and Berghof, The etymologies of isidore of seville, Camblidge University Press, 2006の英訳を参照した。

翻訳

lynx(オオヤマネコ)はlupus(オオカミ)の種に数え入れられることからそのように呼ばれる。オオヤマネコはヒョウの様に背中の斑点が異なっている獣であるが、オオカミと似ている。それゆえオオカミは[ギリシア語の名前が] λύκοςであり、オオヤマネコはlynxである。オオヤマネコの尿は硬くなるとlyncuriusと呼ばれる高価な石へと変わると言われている1。しかもこのことをオオヤマネコ自体が気づいているということは次の事実から分かる。オオヤマネコは排出された液体[尿]をできる限り砂で覆う。これは生得的なある種の嫉妬によって、このような排出物が人間のものとならないようにするためである。大プリニウスはオオヤマネコは一匹以上の出産を許さないと述べている2


  1. 直接の情報源はプリニウスの『博物誌』である。
    https://www.gutenberg.org/files/60230/60230-h/60230-h.htm#BOOK_VIII_CHAP_57
    テオフラストスの『石について』にこの記述がある。詳しくは以下の論文も参照。
    https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/000337900110041371

  2. プリニウスの博物誌でこれに該当する記述は確認できていない。