Asinus's blog

西牟田祐樹のブログです。

イシドルス『語源』翻訳 XVIII-63, 64,65『サイコロについて』『サイコロの象徴について』『サイコロの用語について』

はじめに

テキストはOroz Reta J. and Marcos Casquero, M.-A (eds), Etymologias: Edition Bilingüe, Madrid, 1983. を使用した。Berney, Lewis, Beach and Berghof, The etymologies of isidore of seville, Camblidge University Press, 2006の英訳を参照した。

中世ヨーロッパのサイコロ情報

How Dice Changed in the Middle Ages - Medievalists.net

Unusual medieval dice found in Bergen — Norsk institutt for kulturminneforskning

翻訳

『サイコロについて』

サイコロ(tessera)はすべての面が四角であることからそのように呼ばれる1。サイコロを子兎(lepuculus)と呼ぶ者もいる。これはサイコロが飛び跳ねながら走り回るからである。かつてはサイコロはjacere(投げること)に由来してjacula(投げもの)と呼ばれていた。

『サイコロの象徴について』

さらに、サイコロ使いの中には、自分たちは寓喩によってサイコロの技を自然学的なものとして用いており、ある種の事物との類似性に基づいて技を表現しているのだと考える者もいる。例えば彼らは人生における三つの時との類似によって三つのサイコロで遊ぶのだと主張している。その三つの時とは現在、過去、未来である。類似の理由は時間は止まっておらず、走り行くからである。また一方で、盤上の線が六つの領域に区切られていることは人間の年齢期との類似によって説明される。盤上の三つの線については人生における三つの時2によって説明される。そのような訳で彼らは盤は三つの線によって分割されるのだと言っているのである。

『サイコロの用語について』

昔の遊戯者の間ではそれぞれのサイコロの振りは数字で呼ばれていた。1, [2], 3, 4, [5], 63というようにである。その後にはそれぞれの呼び名は変わっていった。1は「犬」と呼ばれ、3は「仰向け」と呼ばれ、4は「平ら」と呼ばれた。


  1. cf. τέσσαρες: four.
  2. tempora. 先に述べられた現在、過去、未来の三つのことか。
  3. Barney et al. 注 p.371.
    "Some early manuscripts omit the two- and five-spots, and one early type of dice also omitted these, leaving two rounded faces."