はじめに
Rodolphus Goclenius, "Isagoge in Organum Aristotelis", Zacharias Palthenius, 1958の連鎖式(Sorites)に関する箇所(pp.255-259)の部分訳である(最後のScolionの部分は未訳)。テキストは電子化されているものを使用した。
翻訳
第四章 連鎖式について
連鎖式とはその内で複数の諸前提が積み重ねられ、最初と最後の部分から結論が導かれるような省略三段論法である論証のことである。
連鎖式には二つの方式がある。
以下のような時が第一の方式である。より先の前提の後件がより後の前提の前件であるように諸前提が階段状に結合しており、最後の前提の後件が最初の前提の前件に帰属しているような結論が導かれる時である。
以下のような時が第二の方式である。結論が最後の主語と最初の述語から成るまで最初の諸前提に他の導出された諸前提が付け加えられている時である。
連鎖式は種である三段論法と、一つあるいは複数の前三段論法から成る。
第一の方式の定言連鎖式[の例は以下のものである]。
人間は動物である
動物は生命ある物質である
生命ある物質とは実体である
それゆえ人間は実体である.
前三段論法とは別の三段論法の命題が導出されるような三段論法のことである。前三段論法は完全であるかあるいは不完全である。
第一の方式の別の例は次のものである。
全ての正義は徳である
全ての徳は状態である
全ての状態は質である
全ての質は偶有性である
全ての偶有性は実体である
それゆえ、全ての正義は実体である
より下位のものからより上位のものへと上昇し、最終的に最上位のものが最下位のものと結合する。
第一の例の仮言連鎖式の例は次のものである。
もし人間を助けることが人間の特性ならば、万人の利益は共通である。
もし万人の利益が共通ならば、自然法によって一人の利益は万人の利益と結びついている。
もし自然法によって一人の利益は万人の利益と結びついているならば、ある者が他の者に危害を加えてはならない。
それゆえ、人間は人間に危害を加えてはならない。
解明
明白で主である三段論法は以下のものである。
自然法によって同じものに結びついているものは互いにそのものを犯して(violare)はならない。
自然法によって全ての人間は[他の]人間と結びついている。
それゆえ、いかなる人間も人間に危害を加えて(violare)はならない。
小前提は導出される。なぜなら万人の利益は共通だからである。そしてこのことも是認される。なぜなら人間を助けることは人間の特性だからである。
第二の方式での連鎖式の例は式がBarbaraである複数の肯定三段論法第一格から成る。
全ての偶有性は実体である
全ての質は偶有性である
全ての状態は質である
全ての徳は状態である
全ての正義は徳である
それゆえ、全ての正義は実体である。
解明
この連鎖式は主となる[一つの]三段論法と三つの前三段論法から成る。
主となる三段論法は次のものである。
Bar 全ての偶有性は実体である
ba 全ての正義は偶有性である
ra それゆえ、全ての正義は実体である
この三段論法の小前提は第一の前三段論法によって導出される。
Bar 全ての質は偶有性である
Ba 全ての正義は質である
ra それゆえ、全ての正義は偶有性である。
第一の前三段論法の小前提は別の前三段論法によって導出される。
Bar 全ての状態は質である
ba 全ての正義は状態である
ra それゆえ、全ての正義は質である
この第二の前三段論法の小前提は第三の前三段論法によって導出される。
Bar 全ての徳は状態である
Ba 全ての正義は徳である
ra それゆえ、全ての正義は状態である
それゆえ、連鎖式は四つより少ない命題で構成されていることは不可能である。従って少なくとも三つの前提部分を持つ。